民間稲作研究所ミニ通信 第2号

今回も稲葉が書きましたが、次回より理事の皆さんや会員のみなさんで是非執筆したいと思われる方々。是非原稿をお寄せください。国際的な合意事項になっている 「 SDGs 」は日本のみならずアジア全体で進められる農業発展の共通目標です。皆さんの有機農業への取り組みがその方向で進化すること。それが共有財産となることを願っています。

福島県須賀川市のジェイラップの皆さんが3ha の循環型有機農業に挑戦することになりました 。

寒暖差の激しい毎日が続き、 ポット1本植の生物多様性有機稲作(日本版 SRI農法)に挑戦したジェイラップのスタッフの皆さん、緊張を余儀なくしたスタートとなりました。 栃木と比べ、最低気温7℃を超えるのが10日 も 遅い4月30日で す 、 危険を承知で 4月20日に露地育苗 を 開始 することに なりました。今までは自作した電熱育苗室で発芽させ、露地に移動してプール育苗を行っていたジェイラップにとってかなりリスキーな挑戦です。成功すれば電熱育苗室の稼働経費と育苗箱移動経費が少なくなりますが、失敗すれば 蒔き直しという過酷な作業と逸失経費が待っています。

スタッフの皆さんと協議して、冒険ではあるが 1 ⇒2葉期(育苗開始後5日目~10日目)に 7℃を下回る低温注意報が出たとき 保温効果のある プチプチを掛ければ 乗り切れる と いう見通しで、当研究所の製作した1粒播種機を使って3 ha 分1000箱の播種作業を開始しました。1日200箱、休みなしの5日間の作業でした。一番心配したのは5日間の播種作業で最初に播種した種子の水分と最後に播種した種子の水分に大きな差が出て発芽にばらつきが出る 可能性です 。早く播種したものが置き床に移動する前に芽を出さないように乾燥した有機培土( NPO 法人民間稲作研究所開発品)に播種しますから、乾燥が進んでいます。また界面活性剤を入れていない有機培土は水を弾く性質があります。そのことを念頭に おいて 、置き床の水平を1 ㎝ 以内 の誤差に保つこと。ビニールを 敷き 、有機培土を2㎝ 敷きならべた置き床 に 、 播種した育苗箱を並べ 水平を保つこと。この作業の正確さが均一な苗を育てる基本になります。

数々の知恵で見事にクリアー、次に 水を表面から散布して予備灌水をしてから、静かにゆっくりとプール全体に 入水、育苗箱ごと 水浸しにして 1 晩浸種してから水を抜き畑状態で出芽させる のがポイントになります。 文章や言葉だけで 、 このことを伝えるのは至難のわざです。伝える側の表現力と受けて側の注意力が相まってもなかなか伝わらないのが農業技術であり、技能です。現場での情報交換が決定的に重要です。 そのため、有機農業の普及にはポイントとなる時期を選んで現場で指導する場面が必要不可欠になってきます。

技術力に秀でたジェイラップの皆さんには 、 私の知らな かった 技能が 沢山あり、教えながら 学ぶ 場面が多くありました。発芽が不揃いとの一報を受け、心配しましたが写真のように 、 見事に揃った苗に育っており、 研究所の苗を超える 5.5 葉苗を 移植することが出来そうです。抑草と肥培管理出来そうです。抑草と肥培管理にに成功すればいきなり有機稲作のトップランナーに躍り出ること成功すればいきなり有機稲作のトップランナーに躍り出ることになになるかもしれませんるかもしれません。。今後が楽しみです。今後が楽しみです。中道農園や木更津市、ブータンでのポイント研修の様中道農園や木更津市、ブータンでのポイント研修の様子も随時お伝えします。子も随時お伝えします。

最終年に入ったブータン王国 で の有機農業推進 支援 事業

活躍した ストーンクラッシャーと 65 馬力トラクター そして農業予算 倍増 のブータン支援事業が開始された時点では ブータン王国の有機農業 100 %という目標 は 具体性のない抽象的願望であったようです。それで も 画期的な政策目標であることに間違いありません。 「言うは易し、行うは難し」の典型でした。除草剤を使っても増え続けるヒルムシロ を どう 防除するのか、研究者は 薬剤対応しか考え ていませんでした。 3 か所で始まった除草剤を使わ ず、田植え前 3 回代掻き 、 田植後 深水管理という シンプルな方法 でヒルムシロ を始め 、 全ての雑草 がゼロにな ったこと 。

大豆を原料にした有機肥料で 1.5 倍以上の多収が実現したことによって、有機農業による農業 発展 の可能性が見えてきたこと など で、有機農業推進部局の 5 か年計画が採用され、従来 8 億円であった予算が 1 6 億円に倍増された ようです。 背景は判然としませんが・・ 既に実施に移され、その政策の1 つ が チミパンにある 60 ha の王立農場 「 ロイアルプロジェクト 」 を 循環型有機農業のモデル農場として整備 すること でした。 大きなため池と 18 枚約2 ha の棚田が整備されました。

第2の政策が、ブータン唯一の大学である王立大学の自然資源学部に有機農業学科 を 開講 することでした 。名誉なことに開講記念に循環型有機農業に関する講演を依頼 されました。 折角の機会なので 別紙のような 集会を企画し、ブータン関係者とともに有機農業100%実現をめざした事業の在り方を検討する 国際会議と しました。是非ご参加下さい。

しかし、全てが順調に進んでいるわけではなくいくつもの課題も生まれてきました。

その第一は チミパン農場の 有機圃場に大量の石が出て きたことです。みなさまのご支援と クラウドファンデング で 購入した ストーンクラッシャーとトラクター のお陰で、 石を砕き 1 回目の代掻きを行い、 5 月 28 日の訪問時には 最後の作土層の造成作業を残し、有機水田が完成する状態になってきました。特に造成したため 池の水は 十分な貯水量で 何時でも使える状態 であり、同時に 生物の多様性を育み、生態系の整った有機圃場として機能する 重要な施設にな ってき てい ました 。

第2の問題は 循環型有機農業の中核施設である 搾油所でした。搾油機の 動力用 3 相電源が 200vなのにブータンの電圧は 400v で変圧器を使わないと正常に稼働しないものでした。

第3の問題は地元での有機培土と大豆原料の有機質肥料の製造が未完成な ことです。日本から持ち込んで成果を挙げた 1 2 年目のような目覚ましい成果が 今年は 出せない 可能性が あります 。私たちが 20 年かけて築き上げてきた技術がブータンの農地でブータンの人々の手によって完成するためには3~4年はかかると思われ、ブータン 農業省の責任者からも 有機農業支援事業 の継続を依頼されて きました 。 現在 パートナーシップ型の支援事業を申請する方向で検討中です。

私たちの取り組みに対 し 、パタゴニア日本支社より多額のご 支援を頂きました。ご 報告とともに末筆で恐縮ですが感謝申し上げます。本当に有難うございました。

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