民間稲作研究所ミニ通信 第4号

6月28日以降2日間しか晴れなかった異常気象のなか、なたね、小麦を収穫し、息も付かずに進めた田植え作業。終了したのが7月4日でした。2毛作実験の意図をお知らせします。

平成5年以来の低温長雨の続いた7月の異常気象・7月26日からは熱帯夜に

6月28日~7月26日まで記録的な梅雨空が続き、低温寡照という平成5年の大冷害を思い起こさせ
るような毎日でした。心配になって各県の気象状況を調べてみました。出穂前13日前後(7月20日)に
平均気温が6月28日~7月26日まで記録的な梅雨空が続き、低温寡照という平成5年の大冷害を思い起こさせるような毎日でした。心配になって各県の気象状況を調べてみました。出穂前13日前後(7月20)に平均気温が17℃を下回った地域はなく、深刻な被害をもたらす「障害不稔」の発生はないと考えられます。

平成5年を最後に地球温暖化の影響を受け、5年ごとに襲来する冷害的気象も気温の底上げが顕著で、オホーツク海に出来た高気圧から吹き寄せる冷たく湿った風「やませ(山背)」も17℃を下回ることがなくなってきました。ただ日照不足によるいもち病発生の可能性があります。成苗疎植の当会の会員農家はこうした冷害年であってもイモチ被害の心配がなく、安心です。

代わって出現するようになってきたのが高温障害です。最低気温が25℃以上の熱帯夜、最高気温が35℃以上の酷暑となると高温障害の発生が心配になります。高温で雌しべが被害を受け、実が全く入らない不稔の発生と「しらた」と呼ばれる登熟不良の米粒、身の細った米粒などが多くなり、収量も品質も低下します。7月26日から8月上旬にかけ、栃木県宇都宮市以南の地域は軒並み熱帯夜と酷暑の予報です。5月に移植したイネは8月上旬に穂ぞろいになり、高温障害が心配です。この障害を避ける方法は比較的高温に強い品種生研機構「にこまる」、富山県の「てんたかく」、新潟県の「こしいぶき」、山形県の「つや姫」、石川県の「ゆめみづほ」、福井県の「ハナエチゼン」、千葉県の「ふさおとめ」、福岡県の「元気つくし」、佐賀県の「さがびより」、熊本県の「くまさんの力」、宮崎県の「おてんとそだち」などに替える方法があります。コシヒカリになじんだ消費者の皆さんの評価得るのに時間がかかるだけでなく、栃木県の種子条例案(9月県議会で議決の予定)ではこうした品種の原原種及び原種生産や新品種の開発は行わないことになっており、安定した種子の提供が出来なくなる恐れが出てきました。(詳しくは次ページ)

もう一つの有力な方法として作期の移動があります。これは出穂の時期を8月中下旬に移動し、涼しくなってから登熟させる方法です。そのために播種を5月下旬に行い、田植を麦やナタネを収穫した後の6月下旬に移動する方法です。昨年の研究所付属農場のイネでもっとも収量・品質・食味の良かった圃場は小麦を収穫した跡に植えたコシヒカリでした。今年はなたね・小麦跡に移植する実験を行い、その生育に注目しているところです。写真は6月28日ナタネ跡に移植したコシヒカリです。茎数は少なめですが雑草の発生はありません。17℃を下回った地域はなく、深刻な被害をもたらす「障害不稔」の発生はないと考えられます。平成5年を最後に地球温暖化の影響を受け、5年ごとに襲来する冷害的気象も気温の底上げが顕著で、オホーツク海に出来た高気圧から吹き寄せる冷たく湿った風「やませ(山背)」も17℃を下回ることがなくなってきました。ただ日照不足によるいもち病発生の可能性があります。成苗疎植の当会の会員農家はこうした冷害年であってもイモチ被害の心配がなく、安心です。代わって出現するようになってきたのが高温障害です。最低気温が25℃以上の熱帯夜、最高気温が35℃以上の酷暑となると高温障害の発生が心配になります。高温で雌しべが被害を受け、実が全く入らない不稔の発生と「しらた」と呼ばれる登熟不良の米粒、身の細った米粒などが多くなり、収量も品質も低下します。7月26日から8月上旬にかけ、栃木県宇都宮市以南の地域は軒並み熱帯夜と酷暑の予報です。5月に移植したイネは8月上旬に穂ぞろいになり、高温障害が心配です。この障害を避ける方法は比較的高温に強い品種生研機構「にこまる」、富山県の「てんたかく」、新潟県の「こしいぶき」、山形県の「つや姫」、石川県の「ゆめみづほ」、福井県の「ハナエチゼン」、千葉県の「ふさおとめ」、福岡県の「元気つくし」、佐賀県の「さがびより」、熊本県の「くまさんの力」、宮崎県の「おてんとそだち」などに替える方法があります。コシヒカリになじんだ消費者の皆さんの評価得るのに時間がかかるだけでなく、栃木県の種子条例案(9月県議会で議決の予定)ではこうした品種の原原種及び原種生産や新品種の開発は行わないことになっており、安定した種子の提供が出来なくなる恐れが出てきました。(詳しくは次ページ)もう一つの有力な方法として作期の移動があります。これは出穂の時期を8月中下旬に移動し、涼しくなってから登熟させる方法です。そのために播種を5月下旬に行い、田植を麦やナタネを収穫した後の6月下旬に移動する方法です。昨年の研究所付属農場のイネでもっとも収量・品質・食味の良かった圃場は小麦を収穫した跡に植えたコシヒカリでした。今年はなたね・小麦跡に移植する実験を行い、その生育に注目しているところです。

写真は6月28日ナタネ跡に移植したコシヒカリです。茎数は少なめですが雑草の発生はありません。

問題の多い栃木県の種子条例 8月4日緊急学習会開催

6月21日に発表された栃木の種子条例は5000名余にのぼる署名活動や県議会、担当者等との意見交換会での発言、種の会とちぎの作成した「条例案」などは全く反映しない、ただ「条例つくれ」という声に答えただけのものでした。この案のまま制定された場合、以下のような懸念が出てきます。

➀、温暖化による暑さに耐える稲の品種や需要の多い餃子やラーメン・パンに向く国産小麦の開発、豆腐の全国品評会で金賞を取るような優れた在来大豆の保存・普及など全く考えていない点です。他県の条例が地元の環境にあった種子の開発や普及を謳っているのとは対照的です。財政部局からの予算削減要求に押され、手間暇のかかる栃木の風土を活かした稲・麦・大豆の保存と育種事業がなくなる恐れがあります。

②、県内の種子生産とその普及計画を作成し、実施するのは県の最も基本になる責務です。県の条例案ではこの重要な仕事を民間に任してしまう内容になっています。県全体の農家に隈なく種子を行き渡らせるためには相当の資金と人件費が必要になります。種子生産者を傘下に治め、安定して種子を供給するためには相当の資本力のある企業でなければ不可能です。利益を得ることを最高の目的とする企業が最初は低価格で進出し、種子市場を独占したあとは、自家採取を認めず、種子の価格を上げて暴利を得る可能性が出てきます。

➂、条例案ではこうした企業の指定や奨励品種の決定は知事が単独で行うことになっており、議会工作や行政官への工作を得意とする多国籍企業は決定権を持つ人物に猛烈な攻勢を行い、権利を手中にし、栃木の種子事業を支配するのは容易になります。

8月4日(日)こうした緊急事態を受け、NPO法人民間稲作研究所の有機農業技術支援センターにて学習会を開催します。特に県議会の皆さんに参加して頂き、この条例の問題点を正確に把握し、県議会で改正して頂くようお願いしたいと思います。

ブータン王国での循環型有機農業の支援活動が10月18日で終了します。

2017年10月から始まったブータン王国での循環型有機農業の普及による地域創成事業が確かな成果を残し、3年間の事業を終了します。ため池づくりから始まったプロジェクトの第1のミッション①除草剤ブタクロールを使用しないで抑草することは、除草剤を使っても防除出来なかったヒルムシロやホタルィを含め、すべての雑草を23回代掻きと深水管理、種子の回収除去によって発生を抑えることが可能であることを実証してきました。第2のミッションであったイネの収穫量を1.5倍にするというテーマも大豆を原料とした有機肥料と成苗の1本植えによってブータンの平均籾収量360㎏を超え、500~700㎏を達成することができました。

第3のミッションである自給率向上と地域創成事業もイネー麦―大豆の循環型有機農業によって、大豆の優れた窒素固定能力を活かし、麦の無肥料栽培、大豆によるたんぱく源の確保、油脂作物の栽培等によって自給率100%を達成する可能性を示してきました。また小麦・大豆を加工する新たな起業のチャンスを若者に提案することも出来ました。その手始めに米と大豆で味噌をつくり、カナダ小麦で味噌ラーメンを試作し、記念の試食会を実施して事業を終了する予定です。多くのご支援を頂いたボランティア参加の皆さん、クラウドファンデングで資金援助を行って下さったみなさまに心から感謝を申し上げます。

9月30日~10月7日に報告会・企画書の提出・機器贈呈式を行う予定です。参加ご希望の方がおりましたらお知らせください。

7月29日には王立大学に有機農業学科が創設され、開講式に招かれプロジェクトの成果を発表してきました。真剣なまなざしで聞き入って下さった学生の皆さんに今後を託したいと思います。

65馬力トラクター、ストーンクラッシャー、搾油機の試運転も無事終了し、本格的な活用に向け、関係者が一丸となって取り組み始めた姿は、有機農業で100%自給という目標達成の近いことを予感させるものでした。(稲葉記)

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