民間稲作研究所ミニ通信 第3号

平成5年の大冷害・それに続く米騒動の再来を予想されるような梅雨空が続いて
きましたが 7月26日から酷暑となり、5年ごとの襲来する冷害が地球温暖化の影響で、解消したように見えますが、今年の異常気象は心配です。平成5年と比べ、障害発生の可能性を探ってみました。

平成5年の冷害で思い起こすのは、夏休みの始まった7月25日に東京都内の米屋さんが求人に訪れ、今年は冷害で東北地方は 凶作になるよと伝えましたが、当の米屋さんは上の空で、全く心にも止めていない様子でした。8月になって農水省の担当官が生産調整のためと称して強制的に青刈りをさせている情景がテレビで流れ、マスコミ・お米の流通関係者・農林業の行政官などなど、8月上旬までは大凶作の発生など 全く 予見できない 状態に置かれていました。イネ栽培の専門家の間では出穂前13日前後に最低気温が17℃以下になれば、花粉の正常な発達ができず、出穂しても花粉管が伸びず に 障害不稔になることは分っており、7月25日には結果が判明して いました。コメ余り解消に奔走する行政やそれに追随するマスコミは全く独自の眼をもたず 、報道はされなかったために、大多数の日本人は9月になってやっとその深刻さを知らされるはめになりました。 劣悪なお米の 緊急輸入270万トンという手当 で米騒動になり、米よりパン食へという流れが加速されました。こんななかで岩手県紫波町の成苗
2本植研究会(当会の前団体)の会員農家は周辺農家が2俵弱というなかで10俵の成果を上げ、その要因が検討されました。 成苗の疎植栽培が 昭和6 2 年の 冷害時に障害不稔を避ける能力を持つことがそのメカニズムを含めて解明され、その分析が正しかったことを証明することになりました。加えて水田で温 まった水を循環させ、水温を17℃以上に高めて供給していたことが被害ゼロの要因でした。 今年の紫波町の気温は平成5年と似た推移になっていますが、最低気温が4℃高く 、今後の予報でも2℃を上回る最低気温となっていますから、障害不稔の心配はないと言えます。それよりも心配なのがイモチ病です。低温長雨・日照不足で密植したイネや直播のイネでは光合成によるデンプン蓄積の低下で相対的な窒素過剰がイネの体内で生まれ、師管の狭くなる穂首にアミド態のアミノ酸であるアスパラギンが滞留して 窒素濃度が高まり、穂首イモチになる可能性が出 ています。茎数多くなったイネは要注意です。

関東・ 関西 ・ 東北 地区と木更津市で有機稲作 ポイント研修会

今年度は3会場でポイント研修を実施してきました。育苗と抑草の成果と失敗が明らかになってきましたので、その概要をお知らせします。今年は 全国的に育苗期間の4月、 5月は寒暖の激しい毎日が続きました。 置き床に並べ、シルバーラブを被覆して発芽させ、1葉期~ 2 葉期に鞘葉節冠根が伸びる時期に7 ℃以下の低温に晒すと冠根が伸びず、胚乳養分に依存したイネに育ちます。

胚乳養分が無くなる2.5 葉期に体力が弱まり、病原微生物に侵 されるケースが出てきます 。( 生理的 立ち枯れ症状と命名しました。人間も同じですね)今年は寒暖の激しい 年でしたが、温度管理に気を付けて頂き、この症状で失敗した人は皆無でした。問題は別なところにありました。3haを全て1粒播種で実施した東北会場では1000 箱の播種に1週間かかりました。乾燥した有機培土に蒔くために、最初と最後には種もみの水分に大きな差が出てきます。発芽に必要な水分25%に戻すためには、置き床に並べて 1昼夜以上育苗箱を水没させ、吸水させる必要がありました。このことが不十分で発芽しなかった種子があっ たこと。木更津市などで育苗箱が水平に設置されなかったために、高くなったところに水が行き渡らず発芽できなかったなど、微妙な作業上の配慮が均一な苗を作るうえで大きく影響することを学ぶ機会でありました。育苗は概ね80点~90点の出来栄えでした。

抑草は2回代掻き、深水管理というシンプルな方法でコナギ・ヒエ・その他湿性雑草を完全に抑草することが出来たケースがほとんどでした。実践圃場 20 か所のうち、抑草に問題があったのは3か所でした。完ぺきな成功事例は東北のJ RAP の事例です。全圃場で 2回代掻き、深水管理で雑草 の発生が全くない状態になりました。紙マルチで苦労を重ね、もう止めようかと考えていた最後の取り組みであったとのこと。いとも簡単に抑草に成功したことで「今までは何だったんだ」というのが率直な感想とか。雑草の発芽生長の特性を 科 学的に把握し、それに基づいた管理を行えば成功率は100%になることが実証されました。

今後の課題は茎数を 安定的に 確保し、 慣行栽培を 超える 安定多収を実現するための苗質の向上 と肥培管理 技術の 確立です。今年初めて試験栽培に踏み切ったナタネ跡の稲作ですが、ナタネの収穫と田植えの間は10日です。 菜種収穫後 、 ハンマーモアーでなたねの残渣を粉砕し、民稲研 1号を 45㎏散布して、耕起、代掻きを行いました。最初はひたひた水で均平を図る代掻きを行い、翌日に水位を7㎝以上にしてダブダブ代掻きを行い泥水を掻き上げ、コナギの未発 芽 種子に土が覆いかぶさるようにして 3 日後に 5・5 葉令のポット苗を移植しました。5か所約 80 a)の水田全てコナギの発生を 抑えることに成功しました。しかし予想外の低温寡照の異常気象で 1 本植のイネが必要茎数を確保できるのか、微妙な状況です。10月にはその成果が判明しますので またお知らせいたします 。

栃木県の条例案がホームページに掲載されパブコメ意見募集が始まりました。他県の条例と大きく異なる極めて問題の多い条例案です。同封した内容をお読みいただき、ご意見をお寄せください。
(稲葉記)

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